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「向こうに景色のいい所あるけど 一緒にいくかい?」
お雪の言葉にまた男は頷いた 今日は望月だ。 月明かりに照らされた二つの影 草木が銀色に輝き その輪郭を映していた お雪は気づいていなかった その影が人のものではない事に 「綺麗な月だねぇ」 お雪の言葉に男は 「ああ 綺麗な月だ。。。。。」 男が始めて口を開いた....月をじっと見つめながら 二人は 吉原の町が見下ろせる丘に腰を下ろした お雪は何故この男に声をかけたのか自分でも分からなかった 歳の頃は二十歳位か。。 けっして男前でも無くましてや金子を持ち合わせているような風情でもなかった お雪も二十四。。。年増と呼ばれる歳になっていた 過去を捨て 今を生きるお雪にとって若さを羨むことはなかった 自分でも分からない不思議な思いで男の横顔を見つめた 「どうしたんだい?」 「何もしないのかい??」 お雪の言葉に男は戸惑ったようにも見えた 「うふふ。。うぶだねぇ」 そう言いながら帯を緩め 男の手を取り自分の胸に当てがった 男はその感触を確かめるようにゆっくりと手を動かした柔らかく温もりのある感触がその手を通して伝わってきた 男は その柔らかく温もりを懐かしむように顔を埋めたままじっとしていた お雪はその男の頬を撫でながら遠くを見ていた 心 穏やかに。。。 お雪の心にも久しく忘れていた安らぎのような時が流れた ふと 気が付くと男はかすかな寝息を立てていた おもわず お雪の顔に笑みがこぼれる 草木がざわめき出した 風が吹いてきたようだ つむじ風がお雪の長い髪を乱した 思わず目を閉じた 男はもう居なかった 狼の遠吠えが 聞こえた 長く 長く 切ないような遠吠え お雪は 髪と着物の乱れを直し 月に向かい 「また おいで」 呟くように 言うと一人夜道を歩き出した 其の壱 終
by raudo
| 2004-06-11 00:20
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